旅立ち
親しいというわけじゃないけど
とてもとても
私と似た境遇の方がいた
ネットという海の中で
たまにそんな出会いがある
若い頃はそんな出会いをチャンスに
直接会って友達になったりもしたけど
年齢も年齢だし
スマホの時代になって
ネットの世界も変わりつつあり
遠いところから応援していたし
元気をもらっていた
その方が命の灯火を静かに消した
年齢は同じくらい
同じシングルマザー
同じくらいの歳のお子さん
頑張りすぎるくらい頑張っていて
尊敬してた
お子さんを残していく辛さ
残されたお子さんの辛さ
そして
見守ってくれた彼氏さん
買ったばかりの結婚指輪
何かを伝えたいと思っても
何もそこにコメント一つ残せなかった
いつもそうだ
大切な人
好きな人
失うたびに
みんなのように泣いたり
悲しんだり 励ましたり
そういう普通のことができない
まるでロボットのように
フリーズしてしまう
10歳のあの日から
私の体の時計は止まったままで
フリーズすると
生きているのに体が自分でなくなってしまう
心でさえも
そしてタイムラグがあって
初めて考え初めて泣く頃には
みんなが立ち直っている
もし、を考えない練習をしてるのに
もし、しか思い浮かばなかった
でもそれは
私の場合
私がもし死んだら、ではなく
もし、私の大好きな人や大切な人が
この世からいなくなってしまったら
そう
私にとって
私の命は軽いけど
大好きな人たちの命は
何よりも重いのだ
自分が消えるより
誰かが消えることの方が
何百倍も怖い
誰だって抗えないものがあって
人間は生きている限り
必ずこの世から消えるゴールがある
それだけは等しく平等に
残酷なほど平等に
それ以外は不平等で溢れていると言うのに
それでも願ってしまう
愛する人たちを
どうかこれ以上奪わないでくださいと
信じてもいない神様に向かって
意味もなく
ただ
静かに静かに
願うことしかできない
その方が幸せな旅立ちであっただろうと
大好きな人と最後に結ばれたことを
心から祝福して
そして
いつか来る
私のゴールか
誰かのゴールか
きっと誰かにいつかやってくるそれを
私は受け入れられるだろうか
ありがとう
さようなら
またね
そう言いたくて出来なかった
過去の自分に
今の自分は
誇れる自分だろうか